過払金

平成21年7月22日、東京簡易裁判所アイフル株式会社に4人の原告へ過払金約69万円の支払いを命じる判決を出しました。

 アイフル株式会社は「基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において,悪意の受益者としての過払金に付される利息の起算日は,取引終了日の翌日である」、「返還すべき過払金は,既になされた過払金に対する法人税の納付を考慮に入れた経済的合理性の観点から減額されるべきである」と主張していました。

 しかし、東京簡易裁判所は「基本契約に基づく継続的な貸付取引において,債務者(原告ら)の弁済により,利息制限法所定の制限利率により引き直し計算を行った結果
過払金が生じた場合,被告が,法律上原因がないことを知り,又は知りうべき状況の下で受益した時点で受益しているというべきである。すなわち,それは個々の過払金の発生した時点である。よって,弁済により過払金の発生の都度,過払金に対する利息が発生すると解するのが相当である。」、「最高裁平成21年1月22日判例が,
過払金返還請求権の消滅時効の始期を最終取引日としたからといって,過払金の発生及びそのことについて被告が悪意とされるにもかかわらず,過払金に対する法定利息の発生を最終取引日としなければならないものではない(平成21年4月8日東京高裁判決)とされるから取引終了時までは過払金に対する年5パーセントの過払利息は発生しないと解することはできない」、「弁論の全趣旨によれば,確かに,被告は,原告らから受領した利息制限法超過利息の一部について,既に法人税として納付していることが認められるが,法人税の納付による被告の金銭的消失と,被告が原告らから得た不当利得(過払金)の関係について,両者間に,一方の損失に基づく他方の利得という相当因果関係にはないといわざるを得ないから,被告の同主張には理由が無い。」と判断しました。

そして、東京簡易裁判所は、アイフル株式会社に対して、4人の原告へ過払金合計約69万円の支払いを命じる判決を出したのです。




当事者間の公平の見地により過払金が発生した日から利息が発生するとした判決(東京簡易裁判所平成21年7月14日判決)

 平成21年7月14日、東京簡易裁判所アイフル株式会社に過払金約38万円の支払いを命じる判決を出しました。
 アイフル株式会社は「本件訴訟が提起されたことにより,初めて自己が弁済として受領した制限利率超過部分に保有権限が無いことを認識するに至ったのであるから,民法704条の利息を付すべき始期は,訴状送達の日の翌日からである」と主張していました。
 しかし、東京簡易裁判所は「被告は,悪意の受益者の利息について,取引終了日から付すべきであるとし,平成21年1月22日の最高裁判例を引用して,自己の主張の正当性を主張するが,同判例は,過払金返還請求権の消滅時効が取引終了日から進行するとしたものであるが,悪意の受益者の利息発生時期については何ら判示するものではない。受益者に利益が生じた時点で損失者には損失が生じていることを考慮すると,悪意の受益者が利益を取得した時点から損失者に対し,利息を付して返還することが公平の見地から相当である。そうすると,被告は,過払いとなる支払いを受けた日から,悪意の受益者として過払金に対し,年5パーセントの利息を支払うべきである。」と判断しました。
 そして、東京簡易裁判所は、アイフル株式会社に対して、過払金約38万円の支払いを命じる判決を出したのです。




過払金の利息は、過払金が発生する都度発生するとして、CFJ合同会社の控訴を棄却した判決(東京高等裁判所平成21年6月25日判決)

 平成21年6月25日、東京高等裁判所はCFJ合同会社の控訴を棄却して、過払金約329万円の支払いを命じる判決を出しました。
  CFJ合同会社は「最高裁平成21年1月22日判決(判例タイムズ1289号77頁)を前提にして解釈すると,被控訴人の過払金債権に係る民法704条前段所定の利息は,控訴人と被控訴人との貸金取引が終了するまで発生しない。」、「利息制限法所定の制限利率の適用については,同法所定の制限利率によって引き直し計算された残元金と新たな貸付金額との合計額を元本とすべきであり,制限利率を一律18パーセントとして計算する被控訴人の主張は不当である。」などと主張していました。

  しかし、東京高等裁判所は「利息債権は,遅延損害金と異なり,法令の定め又は当事者の合意がない限り,元本債権の発生のときから発生するものである。民法704条の規定が定める悪意の受益者の「利息」(利息債権)について,その文辞上発生時期が明定されていないのであるから,元本たる過払金返還請求権の発生と同時に利息債権も発生するものと解すべきである。また,本件のような貸金取引において,過払金が発生した場合に,当事者間に過払金充当合意が存在し,過払金返還請求権の行使について法律上の障害になる以上,上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同貸金取引の終了時点から過払金返還請求権を行使することができるという意味において不確定期限を定めたものであると解するとしても,そのことから当然に過払金返還請求権についての民法704条前段所定の利息の発生がないと解する法的根拠があるとはいえない。仮に上記利息の性質を損害賠償であるとしてみても,損害賠償請求権に利息が発生する場合,その弁済期限を猶予したとしても,利息が発生しなくなるということにはならないのは明らかである。さらに,前同様に過払金を後に発生した借入金債務に充当する合意があることから,過払金返還請求権を行使しない合意があると認めることができるとしても,上記過払金について利息を発生させないことの当事者の合意をすることが,本件のような貸金取引における当事者の通常の意思であると解することもできないから,過払金返還請求権に利息を発生させない合意が含まれていることを推認することもできない。」、「利息制限法所定の制限利率の適用は,金銭消費貸借契約における名目上の貸金額を基準として適用されるものであり,利息の天引があったとしても,天引前の名目貸金額が基準とされるものであるから,利息制限法所定の制限利率により引き直された残元金を基準とすることは当を得ない。甲1によれば,本件の貸金取引は,最終の貸付けがあった平成20年4月30日まで一貫して10万円を超える貸付残高で推移したものであるから,本件においては,利息制限法所定の制限利率を年18パーセントとして利息の引き直し計算をするのが相当である。」と判断しました。

  そして、東京高等裁判所は,CFJ合同会社の控訴を棄却して、過払金の利息を最終取引日からではなく、発生する都度付加して計算した過払金約329万円の支払いを命じる判決を出したのです。